初釜

 あすの営業開始に合わせ、ガラガラになったコーヒー豆の棚を埋めるため、午前中に少し焙煎を行いました。後は明日の朝に早めに店へ行って焙煎をすれば、何とかコーヒー豆を提供できると思います。年末にまとめ買いして頂いたので、急に豆が減ることはないと予定しており、ゆっくりスタートするつもりです。

 家に帰ってから、妻の実家(白川町)へ行く途中に買った抹茶で、新年のお茶を点ててもらいました。別に茶会ができるような茶室も茶釜もありませんが、我が家の初釜ということになります。茶道の世界では、年が改まり初めて行うお稽古を兼ねたお茶事の事を「初釜」と呼びます。平たく言えば茶道版の新年会といった感じの集まりと理解すると分かりやすかもしれません。今回は午前中に妻と次女が先にお茶を楽しだようなので、一人でお茶を楽しむことになり、特別に紅白の「かもめの卵」にありつけました。

 「初釜」といえば、地場産業の陶芸の世界では、昔から新しい窯を築いて火を入れ、最初に焼成する事を「初窯」と呼び、その窯には「左馬」の文様を描いた茶わんを焼きます。そして、その茶碗でご飯を食べると病気にならないとか、縁起がよいと珍重され、子供の頃には地場産業で働く両親が時々見せてくれました。今は新しい釜を築く人もなく衰退するばかりの陶磁器産業では、「初釜」で焼かれた「左馬」も見ることはないかもしれません。

 そういえば、午前中に焙煎したコーヒー豆も、ある意味「初釜」のコーヒーと言えるかもしれません。新しい焙煎機とはいかないまでも、茶道のように新年最初の焙煎と考えれば「初釜」になります。調べてみると、あるある!色々な珈琲屋さんで「初釜」を意識した焙煎をしているところや、中には「初釜珈琲」といった限定商品で販売する店までありました。コーヒー豆に縁起をかつぐのもどうかと思いますが、日本人は初物信仰というような縁起と結びつけるものもあるので、日本らしいな~って思います。

 さて、明日から新しい年の営業が始まります。大いに楽しみながら、心を込めた一杯を提供します。