ごんの秋まつり

 「これは、私が小さいときに、村の茂平おじいさんからきいたお話です。」こんな書き出しで始まる新美南吉作の『ごん狐』の舞台となった、半田市内の流れる矢勝川の堤に、彼岸花が1.5kmに渡って300万本咲いていると言われる童話の里へ向かいました。
 近くには新美南吉記念館があり、直筆の原稿や図書、日記、手紙などを通じて、南吉の生涯と文学活動を紹介しており、記念館内部には、ところどころ南吉の人形が年齢ごとに入場者を眺めています。そんな館内を覗いてから、歩いて100m程先の矢勝川堤に咲く、彼岸花を見ながら散策します。
 彼岸花は9月中旬から10月上旬まで咲いているとのことですが、堤の川側は既に枯れ始めているところもありますます。けれど、川と反対側はまだ蕾の場所も多く有り、まだしばらくは楽しめそうです。チラシやポスターのように満開に咲いているところを見るのは、天候に左右されるところがあるため、絵に書いたような風景を見るのは難しそうです。
 この彼岸花は、「ごんぎつね」に登場することから、市民によって平成2年から植栽が始まり、現在では名所として広く知られるようになりました。毎年、秋の彼岸頃になると咲き始め、「ごんの秋まつり」として10月4日まで、多くの屋台が出て賑わうそうです。今日は平日なので人混みはないだろうと思っていましたが、大変多くの観光客が訪れており大変驚きました。

 堤を歩きながら、狐は出てこないか?などど思っては見たものの、この現代には「ごん狐」は現れるはすがありません。ただ、田園風景の続く民家の少ない場所に視野が入ると、何だか南吉の世界に引き込まれるような気分になったのでした。