味蕾(みらい)の未来

 お店で扱うコーヒー豆は時々入れ替えており、当初と比べると酸味の多いものが増えてきました。今日もグアテマラのカルメン農園ティピカを「本日のコーヒー」として提供しましたが、今朝来店されたお客様は以前、「この酸味は苦手だから、次回はブレンドにするワ!」って言っていたのが、今では普通に抵抗なく飲まれています。これは色々なコーヒーを飲んで慣れたのか?単に加齢で鈍感になったのか?味覚の変化について気になったので改めて調べてみました。

 

 味覚の感知には「舌」が最も重要な役割を担っており、舌上面(舌背)の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれるザラザラした小さな突起が多数あります。実際に味を感知する器官である味蕾(みらい)は、この舌乳頭の部分に集まっているのです。舌乳頭には、その位置により、有郭乳頭、葉状乳頭、糸状乳頭、茸状乳頭の4種類のタイプがあり、部位により数が異なりますが、全体で約10,000個の味蕾が存在しているそうです。

 この味蕾によって、溝の部分に溜まった液(唾液などの分泌液や食餌由来の液体)に溶け込んだ味覚物質を感知しますが、一般的に味覚には5つの基本味(塩味、酸味、甘味、苦味、うま味)があり、これらを味細胞は別々に感知し、それが複雑に組み合わさることで、さまざまな食品の味を感じます。子供の頃に「舌の先が甘みに特化する」といった、舌の場所を色分けした「味覚地図」なるものを教えられた記憶があるのですが、この「味覚地図」は1990年頃にはすでに否定されており、現在では間違っていたことが判明しています。

 味覚領域を支配する神経系の違いから、味の感受性には多少の差があり、例えばうま味や酸味のシグナルなどは舌奥からの情報が強く伝達されるということなども知られていますが、一般に信じられていたように基本味で完全に分担されているわけではなく、どの場所も多かれ少なかれ、すべての基本味の伝達に関わっていることがわかっています。

 この味細胞は基底細胞の成熟によって生まれ。その寿命は約10.5日と比較的短く、味蕾の味細胞は次々と新しい細胞に入れ替わります。では、「味覚」の機能は、年を取るにつれて衰えるのか、あるいは、経験を重ねるにつれて磨かれていくものか気になりますが、結論から言うと、年を取るほど味覚は衰えるんたどか。過去の実験によると、基本味のそれぞれにおいて、若者の方が高齢者より味覚感度が高いことが確かめられています。味覚が衰える原因としては、年を取るにつれて味蕾(みらい)の数が減少する、という説が有力で、高齢者の味蕾は、乳幼児の30~50%まで減少すると報告されています。味覚を感知する細胞は半分にまで減ってしまう!

 私の味覚センサーである味蕾(みらい)には未来がないのか!?確かに味蕾が減少してしまうかもしれませんが、センサーで感じだ情報を脳が判断する訳ですから、脳による働きを高めることで補えるかもしれません。一流の料理人が他の人が作っている様子を見るだけで、その料理がどのような味になるか想像できるとか、新しいレシピを考案する際の想像力は、多くの経験や知識によって生まれるものです。そう考えると、味覚センサーの情報が少なくても味蕾を補えそうです。

 そんなことを考えながら、美味しいコーヒーを今後も提供し、コーヒーとともにコーヒーに関わる歴史や文化も発信できれば、自分自身の衰えも防ぐことが出来る上、お客様もコーヒーを楽しむエッセンスになるのではと思うのでした。

(参考:百珈苑ブログ等)