瀬戸焼きそば

 将棋の連勝記録歴代1位の29連勝を達成した最年少プロ棋士、藤井聡太四段が昨日、東京・千駄ケ谷の東京将棋会館で行われた第30期竜王戦決勝トーナメント2回戦で、佐々木勇気五段(22)に敗れ、デビューからの連勝は29でストップしました。
 彼が愛知県瀬戸市出身ということで、瀬戸市役所の庁舎に幅1.2メートル、高さ10メートルの懸垂幕が掲げられ、「快挙 瀬戸市出身プロ棋士 藤井聡太四段 公式戦連勝新記録樹立 歴代単独1位」と書かれ、王将の駒も描かれています。ただ、6月27日に掲げられてから5日後には連勝記録が途絶えてしまったため、市役所の懸垂幕も少し寂しげに見えてしまう。

 けれど、歴史的な快挙であることには変わりなく、この事実を体に染み込ませようと、彼も食べたであろう名物の「瀬戸焼きそば」を久しぶりに味わいました。「瀬戸焼きそば」とは、蒸した麺を使い、豚肉を煮込んだしょうゆベースの煮汁で味付けをするのが瀬戸焼そばの一般的な特徴で、具はシンプルに豚肉とキャベツで、仕上げに紅しょうがをトッピングします。しょうゆベースなので、あっさりしていてどこか懐かしい味わいなのです。

 瀬戸市は“尾張の小江戸”と呼ばれ、戦後復興時期に製陶業は隆盛をきわめていました。当時、焼き物の生産に携わる多くの職人達は月に2回しか休みが取れないため、市内の深川神社周辺には多くの飲食店が並んでいて、なかでも豚肉を醤油で甘辛く煮たタレで味付けした焼きそばは、昼夜通した窯火の番で失った塩分を求める職人に人気だっそうです。

 私も30数年前にこの「瀬戸焼きそば」と出会い、深川神社近くのお店に通ったものです。今回も同じお店で焼きそばを食べながら、藤井聡太四段の名前を心に刻み、今後の活躍を願うのでした。(将棋のことはよくわかりませんが。)

 最近ではB級グルメブームに乗っかるため、全国各地で新たな地元メシを発案しているようですが、この「瀬戸焼きそば」は長く根付いた食文化であり、即席地元メシとは異なる思い出が作られています。久しぶりに食べながら、20代の頃を思い出してしまいました。