貝殻でコーヒーを量る

 コーヒーの木の果実には2個のコーヒー豆の形の種子がはいっているのですが、成長の過程で一つが成長せずに、残った1個が丸く育つことがあります。ピーベリーと呼び、栗の大粒の実と同じような状態です。

 また、一つの種子の中は胚乳が「の」の字のように渦を巻いてものが、二重になって育つものがあり、一回り大きい反面、焙煎の途中で分離して凹んで湾曲したりします。これを「貝殻豆」と呼んで、多くの自家焙煎店ではハンドピックの際に取り除いています。気象条件による生育不良が原因と考えられており、ケニアやタンザニアで多い傾向のにあるようです。

 確かに貝殻のように見えますが、成分は炭酸カルシウムではくコーヒーですし、貝柱もありません。(あたりまえか?)通常の豆の状態と比べて薄い部分が多くなるため、過度の焙煎状態となり、苦みが増すなどの理由で取り除かれてしまう貝殻豆ですが、ファミレスのコーヒーマシンの上部に見えるコーヒーストックには時々見られます。何だか厄介者のようですが、イエメンでは貝殻豆だけを集めて高級品として扱われているそうです。いったい現地でいくらで取引されているのか?何で高級品なのか知りたいものです。

 コーヒーに関する興味は日々尽きることがありません。それは、今では日常の飲み物となったコーヒーだからこそ、普段口に入れるコーヒーそのものに関心を持つからでしょう。そして、コーヒーを扱って商いを行っているからなのですが、ややもすると、こうしたブログやカウンターでお客様との会話の中で、知りえたわずかな情報のみでウンチクを語りだしてしまいそうになり、つい立ち止まってしまうこともあります。まだまだ新米珈琲屋であり、学ぶべきことが山ほどあることを自覚しているからです。けれど、今後も出来る限り知りえた情報をもとに、コーヒーを楽しみたいというお客様へ伝えるべき事柄を話していきたいと思います。

 ことわざに、『貝殻で海を量る』というものがあります。「貝殻で海の水を汲み、その水の量で海の大きさを量ろうとすること。すなわち、自分の狭い見聞や浅薄な知識で、大きな問題を論じる浅はかさをたとえていう。」という意味ですが、『貝殻でコーヒーを量る』にならないよう、これからも自分の足で出向いて、自分の目で確かめ、多くの人と出会って学んでいく姿勢だけは続けたいのもです。