深煎りに深入り

 コーヒーの味は産地や品種、精製方法によっても違ってきますが、一番影響を受けるのが焙煎です。

 生豆がもっている性質を正しく把握し、どの風味をどの程度抑え、また引き出すかによって、どんなコーヒーにするのかイメージし、焙煎によって確定させます。

 そのため、同じ生豆を使用しても店ごとによって作られるコーヒーの味が異なります。まめ蔵を利用されるお客様の中にも、「コロンビアだけは、この店の豆が一番好きです。」と言われる方もあるのですから、焙煎度合の確定は各店主の考え方しだいなのです。 

 お店で使用している豆はスペシャリティコーヒーと呼ばれる品質のもで、高地産で硬質豆のため、中煎り・中深煎りが中心となっていますが、コーヒー好きの方の中には浅煎りや深煎りを好まれることもあり、すべての方に満足いただけるような品ぞろえにはなっていません。

 そこで今回は、深煎りについて少し考えてみます。「田口護の珈琲大全(NHK出版」によれば、「コーヒーの醍醐味というのは、つまるところ苦味と酸味のバランス、といってもいい。どのコーヒー豆にも必ず苦味と酸味の成分が含まれていて、それぞれのコーヒーを苦味の強いコーヒーと酸味の強いコーヒーという具合にグルーピングすることができる。コーヒーを深く煎る場合には、あえて酸味の強いコーヒーをぶつけ、酸味を減らすことで全体のバランスをとるのである。」記されています。

 では、深煎りに適した生豆はどのようなものかというと、「田口護のスペシャリティコーヒー大全(NHK出版)」では、「高地産の大粒で硬い豆。肉厚で比較的含水量も多いため、火の通りがわるく、煎りにくい。豆の表面には凸凹があり、濃い緑色をしている。浅煎り~中煎りのレンジでは十分にのびてくれず、中深煎り以降に持ち味を発揮する。」とあります。

 そうなると、深煎りに適した生豆の目星がついてきます。けれど、深煎りの豆を増やすについては、来店されるお客様が深煎り豆をどの程度気に入っていただけるかになります。今回、深煎りについて書くことにしたのは、昨日来店されたお客様が極深煎りが好みの方で、お店の深煎りコーヒーでは充分に満足いただけなかったからでした。だからといて、極深煎り好きの方が頻繁にある訳ではないので、極深煎り専門店として特化した営業をするには難しく、常時新鮮なコーヒー豆を提供できる現在の品ぞろえに落ち着くことになりそうです。

 そんな訳で、今日は深煎りについて、ちょとだけ深入りしてみました。