手網焙煎

 コーヒーのことを勉強し始めた頃、当然のように焙煎にも興味を持ちました。しかし、焙煎には専門の機械が必要で、素人には出来ないものだと考えていたのです。そんな時に出会ったのが「手網焙煎」。市販の銀杏煎りを利用し、ガスコンロの上で15分程度振り続けるという、とってもシンプルな仕組みで楽しめるのです。

 やり方は簡単です。コンロに火をつけて、火力を中火のままで以後調整しません。鍋を振る高さの位置を決めてら、小刻みにひたすらシャカシャカと振り続けます。色が付き始め肌色のような気がしたら、熱反応が始まったところです。匂いも青臭いものから少し香ばしさが出てきたような気がして、薄皮(シルバースキン)が剥け始めます。

 そして、表面が縮んでシワが出てくると、1ハゼが始まるタイミングで、パチと音が出たら1ハゼが始まり、パチパチと音が連続してきたら温度を下げないように頑張って振り続けます。1ハゼのパチパチが1分から2分程度続き、そのパチパチが盛んなところが浅煎りといわれるところです。ハゼ音は静かになり止まり、豆面の表面が黄褐色に赤みが重なり、赤褐色に近い感じになります。

 この辺から煙が出てきて多少焦りますが、その後ピチピチと軽い音がし始めます。これが2ハゼの音で、1ハゼのパチパチと明らかに異なるので判別可能です。ここから中煎り、中深煎り、一気に深煎りへと進むため、煙の中で煎り止めのタイミングを見極めるのが大切です。もうちょっとと思っていたら、真っ黒になってしまうこともあります。

 こんな体験をしながら電気によるサンプル焙煎機、現在のガス用焙煎機と使用してきましたが、今でも手網焙煎が懐かしくなります。直接コーヒー豆が変化する過程が見えるからなのですが、それ以上にハラハラ・ドキドキしながら網を振っていたのが楽しかったかもしれません。そんな体験をお客様にもしてもらいたいと考えている所です。