殺人犯はそこにいる

 東京への往復の時間を使って本を読もうと、前もって買っていたのが『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続少女誘拐殺人事件』(清水潔:著)でした。

 文庫本にしては500ページもあり、往復時間を考えれば読み切れるかな?という安易な考えと、Amazonの内容紹介に「5人の少女が姿を消した。群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで。同一犯による連続事件ではないのか? なぜ「足利事件」だけが“解決済み"なのか? 執念の取材は前代未聞の「冤罪事件」と野放しの「真犯人」、そして司法の闇を炙り出す――。新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞受賞。日本中に衝撃を与え、「調査報道のバイブル」と絶賛された事件ノンフィクション。」の文章が気になったからだ。

 初めて聞いた事件だと思っていましたが、何度かテレビやマスコミのニュースで見た記憶が蘇ってくるので、前半部分は国際展示場に到着するまでに読んでしまいました。後半部分は一日の疲れもあるのに睡魔は訪れず、土岐市駅に戻るまでにほとんど読むことになりました。

 正直、冤罪なんて遠い昔のことだと思っていたし、菅家さんのことも聞き流していたし、著者の報道番組も意識せずに見ていただろう。そこにある事実を知ろうとしない私達の無関心が、真実を闇に葬り去るのだと思うと、無責任に「冤罪」や「怠慢捜査」などと言って済まされるのかと怖くもなるのです。

 組織の隠蔽体質は無くなるどころか、燃費問題に揺れる企業に代表されるように未だに続いています。警察組織に限ったことではなく、組織は組織のみを守り、個人は守らないというのは私自身も経験があり、今後も無くならないことかもしれません。著者のようなジャーナリストの存在が望まれます。

 ちなみに、巷では「文庫本X」として目隠し販売されている本らしいのです。確かに書店員が読んでもらいたいと工夫しただけの内容だと感心しました。