真剣な時間

 週末は妻が中学の同級生と旅行に出かけたため、いつもなら家事の合間に店のカウンタに座り、一杯のコーヒーを飲みながら「美味しいワ!」って言ってくれるのですが、今週は何だか張り合いがありません。

 そうは言っても、コーヒーを淹れる時だけは毎回真剣です。松屋式で淹れているので、蒸らしの時間が長いこともあって、接客やデザートの盛り付け、レジ入力と上手く時間を使いながら、蒸らし後の注湯だけは集中して行います。途中で止められないので、どんな時も真剣なんです。コーヒーの層がお湯に漬けこまれないよう、細く優しく注がねばならないため、この時ばかりは真面目な顔をしているはずです。

 基本的にO型人間の私は「いい加減がちょうどいい!」と思っているので、大抵のことは楽しさを優先しますが、コーヒーを淹れるときだけは真面目なんです。姿勢を正して、歩幅を肩幅程に開き、ドリップポットを持つ右腕の脇を少し締めながら柔らかく構え、左手は腰に組んで挑みます。

 コーヒーを淹れることに特別な技術や作法など無いと思っていますが、きちんと真面目に淹れさえすれば、美味しいコーヒーは誰でも淹れられるはずです。もともと家庭で豆を煎り、臼で挽いたものを煮出して飲んでいたわけですから。ただ、美味しく飲んでもらいたいという想いが込められているかが大事なんだと思うのです。