おいしいコーヒーの真実?

 以前から気になっていた映画がありました。それは『おいしいコーヒーの真実』(英題:Black Gold)という、2006年に公開された英米合作のドキュメンタリー映画です。DVDをレンタルしようか迷っていたところ、Web動画サイトで流れていたので観ることができました。

 内容は、主に後進国であるエチオピアのコーヒー農家を主人公にし、コーヒーは先進国による搾取の象徴であり、最近ではフェアトレードと言って正当な対価でコーヒーを買う動きも出ているものの、コーヒーの価格はヨーロッパやアメリカの市場で決定され、後進国のコーヒー農家はその言い値で買うしか無いというのも。

 さらには、コーヒーで食べて行けない農家が麻薬の栽培に転換しいる実態や、コーヒーを選別する女性たちが1日8時間黙々とコーヒー豆を選別しても、得られる対価はたった0.5ドルしかならないため、エチオピアでは子供を学校に行かせられない上に、さらに飢餓まで発生しており、それらは全ての原因は、先進国や多国籍企業である「ネスレ」「クラフト」「P&G」「スターバックス」が不当に安く買っているからだ。というものです。

 ドキュメンタリー映画というと確かに真実を伝えているように思えますが、全ての真実を映像にしているわけではなく、作成者側の意図によって真実が選別され、並び替えられているため、個々の真実が違う意味合いを持ってきていることに違和感を覚えます。

 この映画の取り上げたコーヒーのニューヨーク市場の相場は、2002年から2007年まで2倍近く上昇しているのですが、価格上昇がコーヒー農家にそのまま還元されているとは思えないし、農家の収入には別の要因が大きいように思えてならない。

 フェアトレードも理念は素晴らしいと思うのですが、実際飲んでみると多くが美味しくない。単に貧しいからという理由だけで報酬を付加するのは恵んでいるのと同じではないだろうか。それに、消費者側も意識してフェアトレード商品を選択しておらず、品質や商品価値に見合うかが重要だと思います。

 南北問題のように単純に弱者と強者で全体像を捉えるだけではなく、生産国側の能力やモラルなどに起因する課題も多くあり、搾取する側は内側にも存在することにも目を向けるべきだという話も聞きます。

 映画の公式サイトでは、「1杯330円のコーヒーから生産者が手にする金額を3~9円」だと、いかにも最終販売者が搾取しているような表現がされていますが、コーヒー農家は、「コーヒー生豆の生産者」であり、輸送・在庫管理・年間保管・金利負担・物流管理・為替リスクなど当然なく、販売者が行うマーケティングや焙煎工場の運営管理・出店開業・店舗経営・メニュー開発などなど、商品価格に転嫁するものは山ほど存在します。

 「真実」とタイトルについていますが、映画で表現されている部分が真実ではなく、映像に見えない部分の真実を見極める必要があると感じた作品でした。自分自身も知らないことが多くて、ついつい作られた情報に惑わされてしまいます。まだまだ勉強が必要だと再認識しました。