カップ・オブ・エクセレンス(COE)

 先日、コーヒー生豆商社のメルマガに、「6月30日のグアテマラオークションを以て、2016年の中米オークションが締めくくられます。」といったタイトルで、中米オークション動向とCOE変更点について、いくつかの変更点が記されていました。これまで、お店で扱うコーヒー豆については、高値のCOE商品をあえて販売しませんでしたが、業界の流れには興味あるのでCOEについて改めて整理してみます。
 カップ・オブ・エクセレンス(COE)とは、各生産国において、その年の最高のコーヒーを選出するために開催される品評会のことです。審査は厳選された国内及び国際審査員であるカッパーによって選ばれ、審査会のプロセスの中で最低5回のカッピングが行われます。継続的に高得点を獲得したコーヒーのみが、審査会の次の段階へと進み、一握りのコーヒーだけが栄誉あるカップ・オブ・エクセレンス(COE)の称号を授与されるのです。その後、審査結果と共に各国にサンプルが送付された後、インターネットオークションを通して、世界中のコーヒー輸入会社やコーヒーロースターなどによって高値で落札されます。
 農園経営者は国内の授賞式で栄誉ある称号と高値の報酬を受け取り、一方、オークション参加者の多くは、顧客に最高の品質のコーヒーを提供するだけでなく、受賞農園の経営者と直接の関係を築く事にも関心を持ち、多数のコーヒー関係者が産地を訪れ、継続的な取引に発展する可能性が高まり、収益を長期的に安定させることにもなるのです。
 この、カップ・オブ・エクセレンス(COE)の発端となったものは、国連の基金と国際コーヒー機構が1997年に協力し、世界のコーヒー生産国が高品質なコーヒーを生産するため、「国連グルメコーヒープロジェクト」として、その土地に合った在来種(主にティピカ・ブルボン系統種)を栽培し、生産方法の開発支援、発展途上生産国の経済的自立を促進するために進められたのが始まりです。そして、その流れを汲んで1999年にカップオブエクセレンスが誕生したのです。
 この新しく開発された高品質のコーヒーのテストマーケットとして、アメリカや日本などが中心となり、世界最大の生産国であるブラジルを対象に準備を進めましたが、ブラジルでは従来からカッピングの長い実績と歴史に強い誇りを持っており、主にアメリカ側の審査方法に抵抗ありました。けれど、品質管理方式が全くスペシャルティコーヒーには適用できないとして、ブラジルの品質管理、即ち、従前の「クラシィフィカドール」(ブラジルの鑑定士)を総て排除することを決断し、審査を実施したのでした。
 そして、1999年10月に初めて、「ダブル・ブラインド」方式で国際審査会が実施されます。従来のブラジルの「クラシィフィかドール」と呼ばれる人達は、審査会場に立ち入りが禁止され、窓の外から国際審査会を覗いていました。そして、2000年に2回目の「カップ・オブ・エクセレンス・ブラジル」が開催され、この国際審査会で84点以上を獲得した総てのロットが、インターネット・オークションにかけられており、日本からは2社が始めて2ロットづつを落札しました。これが日本のカップオブエクセレンス落札・購入の始まりです。
 その後、カップ・オブ・エクセレンス(COE)への参加国は、2001年にはグアテマラが、2002年にはニカラグアが加わり、現在ではブラジル、ブルンディ、コロンビア、コスタリカ、エルサルバドル、、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、ルワンダと増えています。

 メルマガの記されていたグアテマラオークションの結果を、オークションを主催するNPO団体であるACE(Alliance for Coffee Excellence Inc.)のホームぺジを見てみると、落札量世界第1位の日本の生豆商社での名前の他、TERAROSA OFFEE(韓国)、LUSSO COFFEE(韓国)、ORSiR COFFEE [歐舍珈琲](台湾)、グラン・クリュ・コーヒー(香港)といった、日本以外のアジアの国々の名前が目に付きます。

 カップ・オブ・エクセレンス(COE)は、生産者と販売者が共に有益になる制度ですが、ともすれば利益優先に走ってしまい、過大な謳い文句で消費者に高く売りつける方法に利用されたり、組織的や意図的に価格を操作されてしまう可能性も出てきています。なんだか、フェア・トレードにも似ているような怪しげな動きも垣間見れたりするのです。

 幸いにも「COEのコーヒーください」っていうお客様はいませんので、地元に根ざした珈琲屋として、最良と思われるコーヒー豆を選定して今後も提供していこうと考えています。