コーヒー糖

 2年前に島根へ旅行した際、お土産店で見かけたのが「コーヒー糖」でした。その時には「へ~。」とスルーして他のお土産を購入したのですが、最近になって新聞記事に「コーヒー糖」が少し扱われていたので、気になって取り寄せてみることに。何事も気になったら確かめたくなります。

 製造しているのは島根県雲南市にある西八製菓㈱で、パッケージには「ふる里の味 コーヒー糖」とあります。砂糖とコーヒー粉で作られた塊は「そのままでもお召し上がり頂けますが」とあるように、噛み砕くには硬いのですが、口に含んでいると砂糖が溶けて甘さとコーヒーらしき風味が拡がりますが、「お湯で溶いてお飲み下さい。」の方が妥当だと思います。カップに入れてお湯を注いでみると、何だか薄めのインスタントコーヒーっぽい感じで、子供やお年寄りにはウケそうな極甘でした。

 気になったのが「ふる里の味」です。「ふる里の味」といえば伝統的に和菓子のイメージで、この周辺では「竹皮羊羹」「多治見あられ」「八百津せんべい」といったところでしょうか。けれど、島根県で西洋のコーヒーを使ったお菓子が「ふる里の味」というのが不思議です。製造元のホームページを見ていると、こんなことが書いてありました。『コーヒー糖はもともと大阪で生まれたお菓子です。戦後すぐに当時貴重なコーヒーを手軽に飲むために考案され、その後、40年あまり伝統の製法で作り続けられてきました。最後まで作り続けてこられた清水製菓さんが廃業されると聞いて、西八製菓が製法を受け継ぎ幻の味を作り続けています。』なるほど、商業が盛んな大阪生まれなんだ。

 さて、そうなると以前の新聞記事には、「1889(明治22)年に、北前船でコーヒーが運ばれていた史実を示す帳簿が、南越前町河野の町立図書館に保存されていたことを地元識者が突き止め、仕入れ記録には、大阪にあったと見られる問屋から「コーヒ糖」計二十四箱を仕入れた」とあったが、確かに大阪と関わりがあるものの時代が離れているため、私が飲んだ「コーヒー糖」とは別物のようです。

 分かったような、分からなかったような結末でしたが、口には甘かった記憶だけが残りました。