多くの出会いの中で

 現在、新たなセカンドライフを始めているわけですが、度々友人から「よく一歩を踏み出せたね」と聞かれることがあります。長年サラリーマン生活をしていると、組織からの命令で動くことはできても、新たに創造する訳ではなく、過去の事例を踏襲したり、多少の小手先変更だけが上手くなるものです。そんな環境の中からゼロからの挑戦する訳ですから、やってはみたいものの一歩踏み出せないというのが現実かも知れません。

 正直なところ、不安は余りありませんでした。不安な部分を一つ一つ克服していけば良い訳で、むしろ自分には何が出来ない事かを明確にしていく作業を進める間に、妙な自信がついたものです。同じように新規開業する人達の中には、地に足がついていない方が意外に多かったからかもしれません。

 こうしたポジティブな考え方になれたのも、これまでの人生の中で多くの出会いがあったからです。出会いと言う点では本当に恵まれた人生だと思います。会社の上司との出会いの中で自己啓発に目覚めることができ、社外講師との出会いから元気のパワーをもらい、地域の友人達から楽しさを教えてもらいました。そんな多くの出会いの中から、ありのままの自分と向き合い、「比べるのは他人ではなく、昨日の自分と、今日の自分と、明日の自分」といった自己の成長を喜び、いつも前を向いてポジティブに生きる姿勢を求めるようになったのだと思います。

 そんな時、心理学者「アルフレッド・アドラー(1870-1937)」の存在をしりました。朝、時間を確認するためにスイッチを入れたテレビの中で、「性格は変えられる」「トラウマなど存在しない」「嫌われる勇気をもて」等々、常識を覆すような幸福論を掲げ、多く人に人生の指針として読まれている心理学者アルフレッド・アドラーを取り上げていたのです。その中で、アドラーがゴールと考えた幸福とは何かと言う内容が、とてもスッキリと心に届き共感できました。

 アドラーは、他者を仲間と見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられること。そのためには「自己への執着」を「他者への関心」に切り替える必要があるといいます。そのための条件としてアドラーが挙げるのは「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」。これらは決して道徳的な価値観などではなく、幸福に至るための「手段」だといいます。ありのままの自分を受容し、無条件で他者を信頼する中で、「私は誰かの役に立っている」という貢献感を実感すること。それこそがアドラーが考える幸福だといいます。そして、アドラーは、幸福に向かって自力で課題に立ち向かっていけるよう働きかけることを「勇気づけ」と呼び、自己と他者を常に勇気づけていくよう呼びかけているのです。

 人の心に影響を与えてくれる多くの出会いに感謝したと同時に、どのかでアドラーが提唱する生き方に共感できる考え方を、人との出会を通じて学んだのだと気付かせられ、これからも出会うであろう多くの人達との関わりを大切にしたいと思うのでした。そして、昨日も素敵な出会いに恵まれたんです。