初窯

 朝から明日の営業開始のため、7種の豆を焙煎し、ガトーショコラとプリン、紅茶のロールケーキを作りました。5日ぶりの焙煎でしたので、焙煎したての香ばしいコーヒーの香りを楽しみながら、今年最初の焙煎を緊張しながら行いました。

 焙煎機は焙煎窯とも呼ばれ、ガスの火で鉄製のドラムを回転させながら熱します。ですから、新年初めの火入れを初窯と言ったりするのです。地元の製陶業に関わる多くの人にとっては、「初窯」という言葉はなじみが深く、昔から、新しい窯を築いて火を入れ、最初に焼成する「初窯」のときに、「左馬」の文様を描いた茶わんを焼いて取引先や従業員に配っていました。その茶碗で飲食をすると「中風」にならない、縁起がよいと珍重されていたのです。起源は諸説あるようですが、子どもの頃から慣れ親しんだものでした。

 地域によっては、製陶工場や陶芸家が新年初めて火を入れて焼成することも、「初窯」と呼ぶこともあり、珈琲屋という全く違う分野ではあるものの、焙煎機(窯)を通じて地域と関わりがあるようで、何だか嬉しい気分になります。