コーヒーとTPP

 夏にハワイで行われた環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉は、ニュージーランドがごねて妥結に至りませんでしたので、アメリカは来年が大統領選挙、日本は参議院選挙があることから、アメリカの次期政権に先送りされてしまうかもしれませんね。そこで、改めてコーヒーとTPPの関係を考えてみたいと思います。

 平成25年4月4日に外務省が公表した「2013年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書」によれば、農産物であるコーヒー豆について該当するのは、報告書内の「7.その他分野及び分野横断事項の障壁」の内、(7)食品及び栄養機能食品の成分開示要求の項目だと思います。『新開発食品及び栄養機能食品について、成分と食品添加物の名称・割合・製造工程の表記を求めていることは、負担が大きく、専有情報の競争相手への漏出の危険もある。』というアメリカ側の強い要求なのです。

 この項目を分かりやすく言えば、

・ポストハーベスト農薬
・遺伝子組み換え種子

 と言い換えることができると思います。

 日本は世界でも残留農薬に厳しい国ですが、それがアメリカ並みになるということだと思います。特に、収穫後の保存・輸送のために農産物に使われる殺菌剤や防カビ剤などへの規制です。いわゆる生豆になった状態の保存を目的に使用される農薬で、収穫前に散布する農薬と比べて農作物に残留しやすいことから、日本ではポストハーベスト農薬の使用は禁止されています。この規制がアメリカにありませんから、アメリカ並みになるということなのでしょうね。

 もう一つが遺伝子組み換え種子です。スパーに並ぶ大豆製品には「遺伝子組み換え大豆は使用していません。」などど書かれた表示を目にしますが、実際にはほとんど人が遺伝子組み換え大豆を日常的に食べています。だって、アメリカで生産される大豆の96%以上が遺伝子組み換え大豆ですし、日本は大豆の多くを輸入に頼っています。ただ、表示義務があるのは大豆タンパクが含まれたものなので、油や醤油といった加工品には表示義務がありません。結局、私たちは遺伝子組み換え食品に囲まれているのですから、「いちいち遺伝子組み換え〇〇は要らないだろう!」というのがアメリカの言い分です。「そんな表示があると売りにくい!」というのが本音ですから。

 コーヒー豆の遺伝子組み換え種子は、コロンビアでは、すでに試験栽培が始まっているということです。このTPPに合わせて、モンサント社はベトナムで2015年までに遺伝子組み換えの普及を目指しています。また、ベトナムだけではなく東南アジアへ進出しようとしているらしいのです。米ネスレ社は、遺伝子組み換え穀物のモンサント社、穀物商社カーギルと関係があり、メキシコで遺伝子組み換えコーヒー栽培の計画が持ち上がっていますし、また、こうした会社とスターバックスが関係を深めているのは周知の事実です。

 モンサント社というのは、ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造メーカーでもあり、今ではテレビCMでおなじみの除草剤ラウンドアップの会社です。この会社は、除草剤ラウンドアップに耐性をもつ遺伝子組み換え作物をセットで開発、販売していることから、強い耐性を持つ遺伝子組み換え種子の発がん性の問題が何度か取りざたされました。『モンサントの不自然な食べもの』という映画になったほどです。

 TPPが今後どのように進むのかは分かりませんが、知らない間に遺伝子組み換えコーヒーを飲む時代が来るのかも知れません。同時に、「遺伝子組み換えコーヒーを使用していません」といった表示のある、高~いコーヒーを飲むことになるのかも?・・・。