コーヒーの試飲

 来店いただくお客さまの目的は様々です。ゆっくりコーヒーを楽しみたい方から、友人とおしゃべりをしてストレスを発散する方、コーヒー豆を購入される方等色々ですが、そんなお客様には出来るだけ、飲まれている以外のコーヒーを試飲をしてもらっています。もちろん、接客に余裕のある時だけなのですが、せっかく珈琲屋に来ていただいたので、コーヒーの味が色々あることを知ってもらいたいのです。

 コーヒーは約70か国で生産されています。お店で取り扱えるのは、その中のほんの一部ですが、特徴のある産地とコーヒー豆の精製方法の異なるものを選びました。多くの方が産地に関心があると思うのですが、実は精製方法によってもコーヒーの味は大きく変わるのです。

 コーヒー豆の精製方法を大きく分けると次のようになります。

■非水洗式、アン・ウォッシュド、ナチュラル(Un-washed, Natural)
 収穫した果実を乾燥場に平らに広げ天日干しを行いまう。乾燥に要する時間は果実の完熟度合いで異なり、完熟した黒い実では1~3日、未熟な実では2週間ほどを要します。乾燥を均一化するために、日に数度攪拌が行われ、乾燥後に外皮と果肉、内果皮などを機械的に取り除きます。現在では50℃で3日程度乾燥する機械乾燥も行われています。
■水洗式、ウォッシュド(Washed)
 収穫した果実はまず約1日水につけられ、そこで浮いてきた未熟果実が除去されます。外皮と果肉を大まかに機械的に取り除いた後、発酵槽と呼ばれる水槽に1日から2日つけられ、この過程で、果肉と発酵槽に生息する水中微生物の持つペクチン分解酵素の働きにより種子を取り囲むペクチン層が分解されます。水洗いして乾燥させた後、精製工場に出荷され、そこで内果皮を機械により取り除いてコーヒー豆となります。
■半水洗式、パルプドナチュラル(Pulped Natural)
 乾式と湿式とを組み合わせた半水洗式という方法がブラジルの一部の農園などで行われています。収穫後の果実を水洗式と同様に水槽につけますが、発酵槽につけることなく外皮と果肉を取り除き、その後で乾式と同様の方法で乾燥するものです。

 また、インドネシアのアラビカ種で見られる「スマトラ式」は、ウォッシュドと同じ工程で水洗まで行い、乾燥する前にパーチメントの殻を剥いて、生豆の状態で乾燥させる方法です。ウォッシュドで1〜2週間必要な乾燥期間がわずか3日程度で済みますが、乾燥前の生豆は非常に柔らかいので、乾燥中に変形したいびつな豆が多くなり、独特の深緑色になります。
 このように同じコーヒー・チェリーを使っても、生産処理方法を変えると、コーヒーの味は大きく変わります。そんな味の差を感じてもらいたいというのも試飲の目的です。お店の混み具合などで、残念ながら試飲していただけないことも多いと思いますが、試飲をお勧めする際にはお付き合いください。