コーヒーの酸味

 よくお客様から「酸味の少ないコーヒーがいい」とか、「今日のコーヒーはどんな感じ?私酸味が嫌いなの」などと言われることがよくあります。確かに私も昔は酸味のあるコーヒーが苦手でした。ですが、この嫌われ者の「コーヒーの酸味」が実はフルーティーな酸味だったのです。
 そもそも、コーヒーの酸味とは酸性やアルカリ性を示すPhのことではありません。(ちなみにコーヒーのphは5)コーヒーの酸味の成分の正体は、クロロゲン酸やクエン酸、酢酸、リンゴ酸などです。なぜ皆さんがコーヒーの酸味が嫌いなのかというと、不快な酸味を持つコーヒーもあるからです。例えばレストランやファーストフード店で長時間保温されて酸化してしまった、「すっぱい」コーヒーを飲まされた経験はきっと誰にでもあると思います。また、浅煎りのコーヒーや高品質でないコーヒーによくあるすっぱい感じ。こういうのが苦手な方も多いと思います。

 こういった日本人の多くが嫌う「酸味」は上質なコーヒーが持っている本来の「酸味」とは全く別物です。こうした誤解が生まれる理由は、コーヒーがコーヒーチェリーから生まれることから由来する「酸味」ではなく、品質が悪かったり、腐った豆や未熟豆が混入していたり、保存状態が悪くて酸化してしまった結果としての「酸味」であることが原因です。また、今ではスペシャルティコーヒー言われる高品質なコーヒーが普及しつつありますが、日本ではずっとインスタントコーヒーや缶コーヒーが多く飲まれ、大量生産するためにアラビカ種ではない低品質のコーヒー豆を使っていたという背景もあります。低品質のコーヒーには美味しい酸味はありません。そんな理由で酸味が嫌われてしまっているのです。

 そこで、フルーティな酸味を持つコーヒーとして知られるエチオピアのコーヒー生豆を新たに取り寄せました。「グジ」コーヒーです。グジはもともとシダモ(図ではシダマと表示)地区の豆として流通していましたが、特にグジ地域の豆の評価が高いために、「グジ」として個別に扱われるようになりました。生豆購入先商社のうたい文句「きれいに、そして上品に甘く、上品に香るコーヒー」に、ついついほだされて購入しました。さて、お客様の反応はいかがなものになるでしょうか?

 なお、今回の仕入量が少ないので、店内メニューには加えずに店頭での焙煎豆販売のみに限定して取り扱います。