よだかの星

 店舗に飾っている絵は、瑞浪市稲津町在住の中山尚子さんが描いた「よだかの星」を題材にしたイラストです。物語に合わせた全11作品の内の4作品を飾っているのですが、メルヘンチックな画風と裏腹に悲しい物語でもあります。

 作品の概要は、中山さんに頂いたすべての作品データを使って短い紙芝居風の動画にしてみましたが、宮沢賢治の作品らしく「言葉では言い表しにくい」「何と表現したらいいかわからない」という感想を抱く作品もあります。しかし、それはイコール「難解」なのかというと、必ずしもそうではない気がします。

 人生ある程度生きていると理不尽なこともあります。「明日から市蔵と改名しろ」と理不尽な要求を突き付けられるような、疑問と、やるせなさと、悲しさをため込むこともあるでしょうし、いつも食料にしている羽虫や甲虫が、のどの中に飛び込み、もがき苦しみ、そして消化されてゆく。日常、よだかにとって何の変わりのない“食事”つまり羽虫や甲虫の“命”の消費が、今度、鷹に殺されることによって消費される“命”の立場に気付くこともあるでしょう。

 人は追い詰められた時、太陽に近づき燃え尽きたいと願ったり、星のように地上から離れたいと考えたりもします。最後に星となったよだかですが、周りの星々から歓迎されているかと言えば、必ずしもそうではないように思います。よだかのように容姿のハンデを背負った1羽の鳥が、一時のユーモラスな展開の末、星になったという話の流れを素直を読み、そこから何を感じるかは読者の判断なのですが、感じた後にどのような生き方をするのかが、このストーリを個々に発展させるのではないかとも考えます。

 お店には色々な方がお見えになります。平日と土日では客層ががらりと変わり、お客さまの表情もまるで異なることに驚かされます。それぞれの方が様々の人生のストーリーを持ちながら来店され、その姿を「よだか」が見つめているようなイメージで絵を飾っているのです。もちろん、私自身も毎日「よだか」に見られているのですがね。