初心を思い出す

 今日は母の日です。母親には妻から、妻には娘たちからプレゼントが届けら手ました。父親が亡くなってから男は私一人になったので、我が家の女性陣には頭が上がりません。もちろん、お店を始めるにあたって応援してくれたのも、その家族ですので、頼もしく有難い存在でもあります。そんな家族に負担をかけているのも事実で、休日に手伝ってくれた妻の疲れた姿を見ると、やるせない思いがします。なんとか一人で頑張らねば!

 いろいろな事が思うようにできない焦りを感じている時に、午後に来店された年配のご婦人が、「要介護の夫を車いすで入店させてもらえますか?寝たきりなので、こうした場所を経験させたい。」と尋ねられました。もちろんお受けし、これまでにも障がい者の友人が車いすで来店されたり、訪問介護の方が介護士の方と訪れたりされたことを話しました。元々そうしたことを想定してスロープの入口を付けたり、余裕のあるテーブル配置にしたのですが、コーヒー豆の焙煎の事や接客ばかりに気になって、「なぜ地元でやるのか」ということを忘れかけていました。

 自家焙煎の珈琲屋を始める時、色々なお店を巡りました。それぞれこだわりを持っておられ、個性豊かな店づくりをされてみえるのですが、自分がやりたいのは、高くて珍しいコーヒーを販売してコーヒーのうんちくを語るためでもなく、コーヒー好きの一部マニアの場所にする事でもなく、遠方のお客様を地元に呼び込むことでもなく、私は、家族、友人、知人、親戚など、身の回りにいる方たちに美味しいと思えるものを提供したいから地元で始めたのです。

 応援してくださる多くの方にお礼状を出す準備をしながら、その方たちに報いるような良い店にしなければと焦っていましたが、もう一度初心を思い出して、その方たちが来れる場所としてあり続けるために、多少の失敗や不充分なことがあっても、先ずは一人で続けられる程度の範囲でやってみようと思うのでした。店舗作りや設計に際して手伝ってくれた友人が「続けてくれることが一番のお礼」だと言ってくれた言葉の意味を噛みしめます。