人生は冒険旅行か?

 朝ドラの「マッサン」が終了しました。最終週のタイトルは「人生は冒険旅行」で、このドラマの全体を通して、マッサンとエリーの冒険旅行のような人生を表しています。

 実際の人生はと言うと、いつも同じことの繰り返しの日常が続き、冒険旅行とは程遠い生活なのですが、その日常生活の中での出会いや、移りゆく景色の中で発見や変化に気づき、普段と違う一歩を踏み出すこともあります。それを冒険旅行というには憚れますが、現実には劇的な変化など無いものなのです。

 私は早期退職をして珈琲屋を始める訳ですが、これを冒険旅行かと言えば、答えは「ノー」です。誰も行ったこともない事に挑戦するのではなく、独立開業本が書店に沢山並び、開業セミナーが各地で開催されている状況では、「挑戦」ではあっても、「冒険」ではないのです。確かにリスクは高いのですが、そのリスクを最大限に抑えようともしているわけですから。

 冒険というより、日々の出来事にきちんと向き合って、一日一日を大切にして生きていくことの方が、冒険以上に難しくなっているのが現実かもしれません。自分に都合の良い事ばかりしか目を向けず、困難から避けて通ることばかり考えて、答えを自分の中に探すのではなく、他人を非難することでしか見出せない時代なのだから。その中で、自分に与えられた人生を有意義に過ごす方法が「新たな挑戦」ということになっただけです。そんな事を考えならが、妻と一緒に朝ドラの「マッサン」の最終回を見ていました。

 冒険繋がりというい訳で、久しぶりにTUTAYAでDVDを借りてきました。ドイツ映画『コーヒーをめぐる冒険』です。ストーリーは主人公ニコがコーヒーを飲みそこねた朝から始まります。2年前に大学をやめてから、ベルリンでただ“考える”日々を送っているニコ。恋人の部屋でコーヒーを飲みそこねた朝、ツイてない1日が幕を開けます。車の免許が停止になり、アパートの上階に住むオヤジに絡まれ、気分直しに親友マッツェと出掛けることに。さらに街に出ると、ダイエットに成功し別人となった元同級生のエリカ、クサい芝居の売れっ子俳優など、クセのある人たちが次々と現れ、生きる目標を見失っているニコに少し揺さぶりをかけてきます。

 ちょっと奇妙な出来事を通り抜けたことで、喜び、傷つき、戸惑いながらも、次の道へと続く扉が、ぼんやりと見えてくる。誰にでも身に覚えのある、何をすれば良いのか分からない不安な時期と、そこから抜け出した思われた時に、何度も飲み損ねたコーヒーをやっと飲む最後のシーンを見て、自分もコーヒーが飲みたくなったと感じた人も多くはないだろうと思いました。

 けっしてハッピーエンドではなく、何かが始まったわけでもない、でも又新しい一日が始まる毎日、そこにコーヒーがある。コーヒーだから似合うのかもしれません。コーヒーに関わる仕事をしようとしている自分の励みにもなります。