正月を過ごす

 我が家の年末年始の過ごし方は、ここ何十年も同じです。居間で紅白歌合戦を見ながら年越しそば(作るのは決まって私)を食べ、11時50分頃になると家族で近くの八剣神社へ初詣でに出かけます。12時近くになると、ご祈祷をしてもらう厄年の人達からカウントダウンの掛け声が始まり、町内から集まった大勢の初詣客がしばらく列をなして続いています。あちらこちらから「おめでとうございます」という声が聞こえ、この素朴な光景が私は好きです。

 正月の食事はお節と雑煮と決まっていますが、この地方では、2日の朝は「とろろいも」を食べる習慣があります。正月に「とろろいも」を食べる習慣は全国各地にあるようで、3日に食べる「三日とろろ」と言われているようです。とろろを食べると、長生きするとか、それから一年風邪をひかないとか、一年を無病息災で過ごせるとか、謂われはややあいまいですが、山芋には整腸作用や滋養強壮作用があるとされることから、おせち料理のごちそうに疲れた胃をいたわり、仕事始めに備えた体力作りに功を奏してくれそうな風習です。

 「三日とろろ」の風習は、主に東北地方に伝わってきたとされますが、茨城・栃木・群馬といった北関東や、岐阜・尾張といった濃尾地方などの一部地域だけのようで、地域によっての違いは、例えば、福島では3日の朝に食べる、栃木では3日の夜に、濃尾地方では2日の朝に、といったとろろを食べるタイミングにあったり、とろろの調理法にあったりします。

 この東濃地方では、2日の朝に食べる風習が残されており、「とろろいも」を擂る作業は昔から男の仕事として行われています。(すべての家庭を見聞きしたわけではないですが)「とろろいも」を食べる理由も諸説聞きましたが、とろろかけご飯にして、かき込むように食べることで収入をかき込む願いを託すとされるとか、とろろいもを擂る事で、その年の幸福を家の中にすり込むというなど、縁起を担いで食べるものもあり、本当のところはよくわかりません。あたりまえのように食べている習慣なので、「2日の朝は、早起きしてイモを擂らなきゃ」というのが身についているんです。

 いつもどうりの、変わらないお正月を過ごせる喜びを感じながら、新しい1年を始めました。