読書の秋

 読書の秋という訳ではないですが、現在公開中の映画「ふしぎな岬の物語」の原作である、「虹の岬の喫茶店」(森沢彰夫)を読んでみた。ストーリーは次のようものです。

 トンネルを抜けたら海が広がり、岬の先端に小さな喫茶店「岬カフェ」が現れる。店の前には見晴らしの良い位置に手作りの木のベンチと「案内犬」のコタロー。そして、とびきりのおいしいコーヒーを淹れてくれる初老の女性悦子さん。悦子さんの夫は32歳という若さで他界しており、夫が描いた絵、夕焼けに染まる海と虹の絵が喫茶店に飾られている。悦子さんは、どうしても絵の景色が見たくて、ここで喫茶店を営んでいるのだ。
 ピアノ弾きだった悦子さんは、喫茶店にやってくるお客さんの気持ちにぴったりくるような音楽を選曲して流してくれたりもする。
 妻を亡くしたばかりの4歳の娘を連れてやってきた父親には、「アメイジング・グレイス」を選曲し、卒業後の進路に悩む大学生には、彼の進路を決める女性との出逢いの場に相応しい、「ガールズ・オン・ザ・ビーチ」を、包丁を持った「研ぎ屋」の泥棒さんには、「ザ・プレイヤー」をプレゼント。そして、常連のお客さんタニさんが来るといつもかけてあげる曲は、タニさんからのリクエスト曲の「ラヴ・ミー・テンダー」だった。
 岬カフェに溢れる、淹れたてのコーヒーの香りとBGM、きらきら輝く虹の絵。その岬カフェで、ごく普通の人々が、ごく普通の生活をして、ごく普通の喜怒哀楽を繰り広げる物語です。だけど、その中で人々は自分のできる精一杯のことをして生きている様が、いくつかのストーリーを繋げていくのです。ちょっとホッコリする物語。

 ちなみに映画の方は、吉永小百合による、吉永小百合のための、吉永小百合が好きな人たちが作った映画です。「案内犬」のコタローはいませんし、少女の「ハッピーのどきどき、あるよ」が父親や悦子さんをハッピーにさせるのに、悦子さんの魔法の言葉「だいじょうぶ」にすり変わってしまうなど、ごく普通の人々の喜怒哀楽が、豪華俳優陣による、お祭り騒ぎになって全然ホッコリしませんでした。

 最後に気になったのが、物語のモデルとなった千葉県安房郡鋸南町にある「岬カフェ」が、観光地化してライダー達が立ち寄れないくらい普通でなくなったことや、映画で使用されていた「岬カフェ」の焙煎機が、自分が使用しようと思っている富士珈機の1k焙煎機だったことかな。