「あなた達はコーヒーが好きですか」

 コーヒーの焙煎と抽出を学ぶために、いくつかのセミナーに通いましたが、ある東京でのセミナーでのこと、講師である社長から冒頭「あなた達はコーヒーが好きですか?」と尋ねられました。参加者の多くが「そうです!」と答えると、「コーヒーが好きではなく、コーヒーを売るのが好きでなければいけません。」と諭されました。このセミナー参加者の多くが開業を目指しているので、この言葉には少なからずも衝撃でした。商売として行うからには、サスティナブル(持続可能な)を追求しなけけばならず、趣味の延長ではないことを見つめなおす機会になりました。

 ここまでは良かったのですが、この講師(社長)が同業他社の批判をしたり、ハンドピックを行わない、自分の焙煎所では直火式焙煎機でコーヒー豆を販売しているにもかかわらず、受講者へは自社製の半熱風式焙煎機を勧めるなど、興醒めする部分もありました。

 改めて自分に問い直してみると、「コーヒーが好きです。そして、コーヒーを販売することも、コーヒーを知ってもらうことも好きです。」という答えになります。これまで、このホームページを作成してきた中で、お客様にコーヒーについてもっと知ってもらおうと、動画や、歴史、クイズ、産地情報などを作成していく中で、これまで自分が多くのセミナーで学んだ過程よりも、具体的に表現する際に学んだことの方が多いことに気づかされました。インプットよりもアウトプットする時にこそ、学べるということです。

 同時に、その際に感じたことは、好きでなければ続かないという事実です。珈琲屋は決して儲かる仕事ではありません。チェーン展開や多店舗して薄利多売でなければ収益性は上がりません。コンビニ・コーヒーが台頭し、コメダが来れば喫茶店が潰れると噂される時代のなかで、新規に開業するためには、好きだからこそ出せるアイデアや努力、継続性があると思うのです。

 こんな事を考えたのは、工務店の社長が「材木が好き」というのを何度も聞いたからです。工務店の社員の方や設計士からも「社長は材木が好きですから」と、会うたび聞いていたので、以前の言葉「あなた達はコーヒーが好きですか?」と繋がったのかもしれません。諺に『好きこそ物の上手なれ』というのがあります。誰でも好きでやっていることは一生懸命になるし、それに関して勉強したり工夫したりするので、自然に上達するものであると。まだ始めてもいなにのに滑稽かもしれませんが、「コーヒーが好き」と言い続けられるようになりたいものです。