ポストカードカフェ

 電車の移動中に読むための本を選択するとき、本棚から取ったのが「海岸通りポストカードカフェ」でした。気楽に読める小説ということもありますが、自分が絵手紙を書いてきたというのもあり、憧れるカフェだからかもしれません。

 舞台は横浜の、みなとみらいの万国橋のたもとにあるポストカードカフェ。壁一面や天井にまで所狭しと貼り付けられたポストカードは、人々の大切な思い出や気持ちを半永久的に保管してくれる宝物。常連さんや、はじめてのお客さん、時には店員さんなど、それぞれの目線でのストーリーが順番に披露されていていき、少しずつ個々のストーリーが繋がっていきます。封書でもメールでもない、ポストカードだからこその良さが愛情たっぷりに描かれていて、とっても嬉しい気持ちになります。

 私自身、十年以上も前になりますが、ある方を慰めようと約1年の間、絵手紙を出し続けた事がありました。相手にとって望ましいかを考えるよりは、自分自身への後悔の念と戒めのために書き続けていたのかもしれません。結果的良かったのか未だに分かりませんが、手紙というものの力を信じたいと思って書いてたのです。

 本の帯にはこんな文面があります。「メールじゃない。葉書だから書けた、祈りにも似た気持ち。投函された想いは店とともに、生き続ける。どこかに置いてきた自分にも、いつでも会えるよ。」自分の店が将来どんなストーリーを作っていくのか分かりませんが、お客様の思い出に残る店にしていきたいと思うのでした。