なぜ地元でやるのか

 焙煎機の見積りと店舗で使用予定の生豆を焙煎するため、久しぶりに大阪へ出かけてきました。朝、土岐市駅から電車に乗る際に、育成会でお世話になった方と出会い、車中で久しぶりにお話しすることができました。その中で話題になったのが店舗の場所です。決して人通りの多くない町で、顧客の少ない地元でするのかという内容です。このことについては、多くの人から言われています。今回は「なぜ地元でやるのか」について説明します。

 実はとてもシンプルな発想からなんです。「美味しいものがあったら、誰に食べてもらいたいですか?」私は、家族、友人、知人、親戚という具合に身の回りにいる方たちです。だから、地元なんです。その方たちはシフォンケーキは好きかもしれませんが、コーヒーはあまり好きではない方もいるかもしれません。ですが、構わないのです。地元でコーヒーの好きな方がいればそれでいいんです。「日本中の方に自分が作ったものを食べてもらいた、飲んでもらいたい」と考える方は大きな店にしたいと考え、全国展開するでしょう。ですが、私は、この町でこの町の人に利用してもらいたいんです。

 私が生まれ育った場所はこの下石町ですし、両親もこの町でお世話になっています。子供たちも自分と同じ学校に通い成長し、今では立派な社会人になりました。大きく儲かる場所ではありませんが、地元に愛される場所になればと考えています。

 もう一つは父親からの影響です。若い時は「父親のようにはなりたくない」なんて反発する一般的な子供でしたが、年を重ねる毎に「父親のような生き方もいいな」と思い始めました。父親は特別な人ではなく、地元の釉薬メーカーで働き、定年後もシルバー人材センターで働きながら、畑仕事をしていました。地域のお年寄りの畑を手伝ったり、保育園の畑のお世話をしたり、生涯に渡って働き続ける真面目が取り柄の人でした。会社員である自分も将来どんな生き方をしたいのかを考えた時、地元で骨を埋めるような生き方をしたいと思うようになりました。ただ、父親のように畑仕事が好きではないし、長く続けられそうな事はと考えた時に、このお店にたどり着いたのです。若い時から妻に「いつかは喫茶店やりたいな」と話していたので、この選択は自然な行動でした。父親のように「真面目が取り柄のマスター」ってのもいいじゃないですか。