コーヒー豆を購入されるお客様から、「親戚が豆を買っているお店だそうです。」といって、雑誌記事のコピーをいただきました。調べてみると、ku:nel(クウネル)2011年11月号(マガジンハウス出版)の「街とコーヒー。」という特集記事の中の一部で、『盛岡・クラムボンより
小さな手紙と光る豆』と題した記事でした。
「城下町の風情が残る静かな通りを進むと、オレンジのあかりが灯る喫茶店、「クラムボン」があります。店主の高橋正明さんは、窓辺の焙煎機で毎日豆を煎り、配達の注文が入ると、それを袋に詰めて発送します。郵便振替用紙の間に、直筆の小さな手紙を挟んで。」というくだりで始まります。
富士ローヤル5kg焙煎機の前でハンドピックしている姿、バネ秤と焙煎記録が書かれたノートなどの店内の様子、盛岡市内を流れる川の景色、そして、何よりも軍手をはめた店主の渋い顔が「クラムボン」という店の雰囲気を醸し出しています。
記事の中で、理想のコーヒー屋を聞かれ、こう答えておられます。『「ひとりでも友だちと来ても居心地がいいところ」と、すんなり答えが返ってきた。一杯のコーヒーで空間を共有できるのが喫茶店だから、そえぞれが自由に過ごしてほしい。読書や書物をしたり、グループでおしゃべりに興じてもいい。主役は、店主でもコーヒーでもない。お客さんだ。そして、お客さんに喜んでもらうためには、いい空間をつくらなくてはいけない。いい空間にはゆるやかな時間が流れ、それが居心地のよさに繋がっていくと思うから。その手助けをするのがおいしいコーヒーなのだ、と。』
なる程と思いながら頷いたのですが、一つの空間にそれぞれの思いを共有するのは難しいもので、おしゃべりの声の中で本を読むのは気が散ったり、コーヒーに癒された後にコックリ居眠りをすることも出来ないなど、空間をコントロールし、いい空間を作るのは至難の技だと感じたりします。でも、そうありたいとも。そして、それ以上に家庭で素敵な空間を作ってもらいたいと。
ところで、この店に親近感を感じたのは店名の「クラムボン」でした。宮沢賢治の『やまなし』に出てくる正体不明の「クラムボン」であることは、岩手県盛岡市という宮沢賢治ゆかりの地であることから想像でき、「まめ蔵」の店内に飾っている『よだかの星』を題材にした絵も宮沢賢治であることから、不思議な偶然なのか必然なのか、お客様が引き合わせくれたような気がしてなりません。
再び店主の写真を見ながら、「20年後には自分も珈琲屋らしい店主の顔になっているのかな~。」と思ってみるのでした。
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あべちゃん (木曜日, 31 8月 2017 08:55)
本当にすごい偶然!
名前も、一緒!
巡り合うテレパシーですよ、きっと!
まめ蔵さんの、居心地の良い空間 私は大好き(笑)!
まめ蔵 (木曜日, 31 8月 2017 12:56)
普段の生活の中にも奇跡的な出会いは意外と多いのかも知れません。
ただ、それに気づくセンサーが鈍っていないかどうかだと思います。
生きていること自体が奇跡だと分かれば、何にだって感動できるんはず。
そんなニュートラルな気持ちで、日々お客様を迎えたいものです。
ちなみに、名前は正明と政明、本人は大きな違いだと思ってるんです。
顔も私よりハンサムでしたから。
梅吉 (金曜日, 01 9月 2017 15:12)
その記事を知っています。近くに「まめ蔵」さんがある良さをあらためて思います。外から店内が見えないお店なのに安心して扉を開けられる不思議な魅力のあるお店です。臨時休業は構いませんから、マスターの暮らしと共にお店を開け続けてください。
まめ蔵 (金曜日, 01 9月 2017 20:27)
長く続けたいと思って始めた珈琲屋です。この町に当たり前に存在する店にしたいと思っていますので、長くお付き合いください。